特別編 特別編
【この試合について】
ウイナーズカップはＭＦＪ承認イベントの位置付けで、参加するにはＭＦＪライセンスが必要です。おまけにＮＢには昇格ポイントまで付くらしいのです。要するに準選手権です。さらに主催者は厳しいセクション設定をするってウワサのチームナミタさんです。
前回のファミトラで脱ビギナー宣言をしたワタシはいきなりビクビクです。
【前日のセクション確認】
やはり前日にサダオヤヂと共にコースに行きました。練習に加えて、どんなセクションなのか確認する為です。話を訊くと、明日はＮＢからではなく、ビギナークラスも設定されるようです。
ワタシは去年年末、ＭＦＪライセンスを更新するトキについでにトライアルＮＢも申請していたのでライセンスを持っています。サダオヤヂはトライアルライセンスを持っていないので、明日どうしようかと悩んでいたようですが、当日にエンジョイライセンスを取得できるらしいので、それを取って出場すると決めたようです。
ワタシは一応、前回のファミトラでビギナークラスを最後にするつもりでしたので、この日はＮＢセクションを確認します。サダオヤヂにもＮＢを勧めつつ、一緒に第１セクションから歩いてみました。
そして・・・ワタシは第１セクションでいきなり真っ青になってしまいました。高いステアの着地から、いきなり次のステアに上がる設定なのです！こんなの行ったコトがありません。サダオヤヂはステアを見上げながらヒザをガクガク震わせて、足下に大きな水溜りを作っています。（←云うまでもなくオシッコをタレてしまったのです）そして唇をブルブル震わせながら云うのです。
サダオヤヂ：「マ、マジ？？コ、コレ？？・・・」
ワタシ：『そ、そーらしいね。。ハハ・ハハハ・・・』
このまま第１セクションの下見だけで帰るワケにもいかないので、次は第２セクションです。
・・・我々は既にチビりきっているので何も出ませんが、今度は言葉さえ失います。沢の中から上る設定の岩（特に２つ目）は、我々にとって今までタダの風景だったモノなのです。サダオヤヂは顔面蒼白、唇真っ青、視線は宙を泳いでいます。酸欠なのか、ただ口をパクパクさせています。セクションの下見だけで、チアノーゼなのです。ワタシはワタシで強い目まいの為、まっすぐに歩けません。酔っ払いみたいにフラフラです。。
とりあえず、次、第３セクションに行ってみます。
ところが第３セクションへの道中、オヤヂはいきなり元気になっています。なぜかニコニコさえしています。ん？おかしいなぁ？コイツ、さては！！
ワタシ：『おいオヤヂ〜！さてはＮＢをあきらめたなぁ！？』
サダオヤヂ：「ウン！だってね、あんなの絶対ムリだもん！明日はビギナークラスで出るよ！あぁ一気に気が楽になったよ〜！！」
ワタシ：『お、おまえってヤツは！！』
サダオヤヂ：「キミは明日、ＮＢを走るんだってねぇ、大変だねぇ。ま、ガンバレよー！ハハハのハー！」
・・・ま、その気持ち、よーく解ります。。泣
その後も
等々、激しいセクションが続きます。ワタシにとっては、どのセクションも行った経験が無いモノばかりなのですが、特にコレらは強烈です。走る場所としては全く認識していない所ばかりなのです。
ワタシは覚悟を決めました。とにかくヤってみよう、と。（この日の夜は、なかなか寝付けませんでした。）
【当日】
ＮＢのエントリーが最も多いようで、４０台程のようです。どのセクションから回ってもいいそうですが、よく解らないので第１セクションから行く事にします。
ですが、恐くてなかなかセクションに入るコトが出来ません。何度も他の人が走るのを確認して、思い切り気合いを入れて、ようやくセクションイン！２個目のステアに引っかかり、醜く単車を引っ張り上げて、ヒーヒー云いつつ３点で出ました。
第２セクション、これまた何とか３点でセクションアウト、もちろん３点。１セク（第１セクションを略して、こう呼ぶようです）も２セクも気を抜くと５点なのです。ワタシにとっては本気汁ダラダラの気合い１００％超で、やっと走りきるコトができるって難易度のセクションなのです。
第３セクション、ここはステアが無く、ターン技術を問うセクションです。ここでクリーンしておかないと全セクション３点または５点になりそうなので、これまた気合い１００％でセクションインしました。なんとかクリーンできました。
そして恐怖の第４セクション、皆がバタバタとステアに落ちて５点を喰らっています。岩だらけの地面からの大きな岩越えです。ワタシにとっては、普通の精神状態ではとても走る気持ちになんてなれないレベルのセクションなのです。その時、なぜか目前の空中に“挑戦ニンジン”がプカプカと浮かんでいるのです。ワタシは迷わずソレをわし掴みにし、そして丸々１本をガリガリとカジりました。
『ムムム！挑戦シタクナッテキタゾ！！』
挑戦ニンジンは効果バツグン！花粉症の鼻水がピタリと止まり、脳内のウエイストゲートからアドレナリンが噴出する音が聞こえます。プッシューーン！いつもの通り、コイツは効くぜぇ。サイコーだぜぇ！しかし久しぶりに食うなぁ。半年ぶり位かなぁ。
ニンジンの幻覚症状でしょうか、こんな声が聞こえてきたようにも思います。
『単車ガ壊レルナラ壊レテミロ。少々ノ怪我ナラ止ム無シダ。チクショー、イッタルゼェ！』
こんな声も聞こえたかもしれません。
『イケタラ、カッコイイナ！イケタラ、ビンビンニ シビレルゾ！！』
耳から湯気を出して、気合い５００％超で４セクに入りました。しかし最初のステアで引っかかり、通過できず即５点でした。。悔しくて半ベソですが、苦笑いでゴマかしました。やはり気合いや根性だけでは全くどうにもなりません。しかし気合いと根性なしでは岩に向かうコトさえできないのです。セクションに入るコトもできないのです。
川の５セクをバタバタと３点で抜けて、次は６セクです。ココは“だんなさん”がオブザーバーです。最後に大きな岩を越える設定なのですが、こんな岩を走ったコトなどありません。下見で岩の下まで来て、岩を見上げると足がガクガク震えます。こう思いました。
（ココを上るのか。。落ちたらバク転だな。。きっと痛いだろな。。）
そして、こうも思いました。
（イケたらカッチョイイぜ！トライアル選手みたいだぜ！）
うまく走る人を何度も見学して、イケるイメージを網膜と脳裏に焼き付けて、だんなさんにアドバイスを貰い、そしてやはり空間の挑戦ニンジンをカジってから、セクションに入りました。岩の下まで来ると思わず声が出ました。
『オォ〜！！』
そして前を上げて、グィっと行くと、なんとイケました！！
『ヤーーーー！！●△□※＊〜！』
だんなさんも喜んでくれています！いやぁ、シビれました。シビレまくりました。脳ミソの奥がジンジンしました。
（オレは勝った！岩に勝った、自分に勝った！そして今 生きている！）
このライブ感をどう表現すればいいのか解りませんが、凄まじい刺激です！ま、実は皆がイケている、たぶん何てコトは無い岩なんだと思うのですが、ワタシにとっては感動的なコトなのでした。
「人類や普通のトライアルライダーにとっては常識かもしれないが、ワタシにとっては大地を揺るがす大きな一歩」
でした。（↑いつも通りオオゲサです。笑）
試合はまだまだ序盤です。次は丸太飛び降りからタイヤを上る７セクです。これまた、こんな丸太を降りたコトなど一度もありませんし、降り方さえ解りません。ここで前転して終了するかもしれません。おまけに続いてタイヤ上りです。やはり初めてですし、バク転の可能性もかなりあります。こんなトキ、ビビって腰が引けたらヤバさ倍増です。ここでも
『３０セクション闘えますか？気合い１本、挑戦ニンジン！！』
（ニンジン栽培に成功したら商売します。笑）
そしてセクションイン。丸太を降りるトキ、アクセルが大きく開いてしまって暴走しかけつつ、なんとか耐えてタイヤに向かいます。迫り来る恐怖と闘いつつ、前を上げて、何とかクリーン！！成功したトキは、ワタシ、シビレっぱなしのシビレまくり！
次はしょーもない失敗をしてしまった、クリーンできるハズの８セクを終え、明らかに難しい９セクに来ました。セクションインしてすぐの３個岩を足を付きつつ無理矢理越え、ヤバい雰囲気プンプンの岩群にきました。左のラインから岩の上を越えて行こうと思いソッチに行くと、岩に引っかかってニッチもサッチも行かなくなりました。３０秒ほどグリグリやってたと思いますが、まったく単車を前に進めるコトができません。よーし！とステップを両足でグっと踏んで、クラッチをポンとつないで脱出を試みました。すると！！単車はワタシを乗せて横っ飛びに空中に跳んでしまいました。ワタシは岩に落下し、ヘルメットが岩とぶつかり、目の前に黄色い星がバシバシっと散りました。そして単車が降ってきていたようで動くコトができません。
素早くオブザーバーの方や見ていた方々が助けてくれました。ご迷惑をおかけしました。スンマセン。幸いなコトにケガはありませんでしたが、こんな５点でした。もうガッカリです。ちょっと恐かったし。。失敗したトキは、ワタシ、半ベソの半泣き。
こんな調子で走り続けましたが、２ラップ目、５点を喰らったセクションに入るトキの気持ちは何て表現すればいいのでしょう。全くイケるイメージが湧かないままで、ビビってしまっているので、当然セクションアウトできません。連続５点の悔しさ。。これまた表現できません。２ラップ目は集中力が切れかけているのか、うまく走れない事が増えてきました。
そして３ラップ目、既に３ラップして終了したサダオヤヂを誘いました。
ワタシ：『なぁオヤヂ〜、３ラップ目、一緒に回ってくれへんか。お助けマンがいたらイケるかもしれんのや。』
サダオヤヂ：「よしきた、そうしよう。」
オヤヂは云わずともそのつもりだったようです。むしろその為に早回りしていた感さえあります。自分の予習の為でもあるのでしょう。
そして５点続きの４セクに挑みました。しかし、３ラップ目もやはりダメでした。全く歯が立ちません。出直します。
これまた５点続きの９セク、ココはオヤヂの助言通り、確実にイケるラインをベタベタと足を付きながら、何とか３点で通過。ありがとーオヤヂ！冷静で確実な判断は大切なんだなぁ。こんなに嬉しい３点は初めて！
こうして全て走り終えてクルマに戻り、一息ついていると、何だか目から汗が出てきました。一体どうしたというんでしょうね（笑）。キリキリのテンションから解放された安堵感なのか、いくつものセクションを“トライアルっぽく”マトモに走れなかった悔しさなのか、気合い全開で３０セクションを走った後の人間ガス欠なのか。。んー、きっとやたら悔しかったんでしょうねぇ。ま、今となってはもうどうでもいいんですけどねぇ。
【結果】
●サダオヤヂ：ビギナークラス１位（６台中）
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●ワタシ（ＴＣアニキ）：ＮＢクラス３１位（４０台中）
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なんと！サダオヤヂは優勝でした！！パチパチパチ〜！！表彰台では満面の笑みです。しかし、しばらくしてから
「アニキならオールクリーンもあり得るセクション設定だった。おまけに参加台数も少なかった。こんな点数ではイバれないよ。。」
なんて云ってました。いやいや、勝てるトキに勝つってのは大事なコトよ！立派！！
これでサダオヤヂもビギナー卒業です。良かったなぁ！次から今回みたいな迫力あるホンマモンのセクションを走れるんだぜ、良かったなぁ（汗）。なんだなんだ？もうチビってんのかぁ？でもね、かく云うワタシが思い出しただけでチビってるのはナイショです。。
２００７．３
ＴＣアニキ
